「親のスマホにログインできず、何のサービスに入っていたのかも分からない」——生前整理をお手伝いしていると、こうしたお声をよく伺います。結論から言うと、生前整理でいちばん後回しにされがちなのが銀行口座・保険・デジタル遺品の3つです。モノの片付けと違って目に見えないため、ご本人が元気なうちに一覧化しておかないと、ご家族が手続き先も分からないまま何ヶ月も苦労することになります。この記事では、何を・どこまで・どう残せばよいのかを、専門用語をできるだけ避けて順番に解説します。
結論:3つとも「一覧表」にして家族に伝えられる形にしておく
銀行口座・保険・デジタル遺品の生前整理でやることは、突き詰めると1つです。それは「どこに」「何が」「どれくらい」あるかを一覧にまとめ、いざというときに家族が見られる場所に置いておくこと。通帳やパスワードそのものを渡す必要はありません。存在と場所さえ分かれば、あとの手続きは家族と専門家(金融機関・司法書士など)で進められます。まずは全体像を表で確認してみましょう。
| 整理する対象 | 生前にやること | 残す情報の例 |
|---|---|---|
| 銀行口座・証券口座 | 口座の棚卸し、使っていない口座の解約 | 金融機関名・支店名・口座番号・ネット銀行のログインID |
| 保険(生命保険・医療保険) | 契約内容の見直し、証券の保管場所の共有 | 保険会社名・証券番号・受取人・担当者の連絡先 |
| デジタル遺品(スマホ・PC・SNS・サブスク) | 使っているサービスの棚卸し、不要な解約 | 端末のロック解除方法・主要サービスのID・月額課金の一覧 |
ここから、それぞれの整理の進め方を具体的に見ていきます。
銀行口座・証券口座の生前整理|まず「使っている口座」を絞り込む
年齢を重ねるほど、転勤や引っ越しのたびに作った口座、キャンペーンで作ったネット証券の口座などが手つかずのまま残りがちです。まずは通帳やキャッシュカードを一箇所に集め、直近1年以上出し入れのない口座は解約を検討しましょう。使っている口座だけに絞り込んでおくと、ご家族の手続きの負担が大きく減ります。
ネット銀行・ネット証券は特に注意
通帳もカードも届かないネット銀行・ネット証券は、家族がその存在に気づけないことがいちばんのリスクです。実店舗のある銀行であれば通帳や郵便物から発覚しますが、ネット系の金融機関はメールやスマホのアプリの中にしか手がかりが残りません。少なくとも「どこの金融機関を使っているか」という金融機関名だけは、エンディングノートなどに書き残しておくことをおすすめします。
なお、口座の名義人が亡くなったことを金融機関が把握すると、口座は相続手続きが終わるまで凍結されます。凍結後は戸籍謄本一式や相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書などをそろえる必要があり、対面型の銀行より郵送中心のネット銀行のほうが手続きに時間がかかる傾向があります。生前に口座数を減らしておくことは、ご家族の相続手続きを楽にすることにも直結します。
なお、生活費の当面の支払いに困る場合は、遺産分割が終わる前でも、同一の金融機関につき一定額まで単独で払い戻せる制度(預貯金の仮払い制度)があります。上限額は金融機関ごとに定められているため、実際の手続きの際は各金融機関または専門家にご確認ください。
保険の生前整理|「入りっぱなし」の契約を見直す
生命保険や医療保険も、加入したまま内容を忘れてしまっているケースが少なくありません。生前整理のタイミングで、以下の3点を確認しておきましょう。
- どの保険会社と、どんな種類の契約をしているか(証券番号を含む)
- 保険金の受取人が誰に指定されているか(離婚・死別などで変更が必要な場合がある)
- 保険証券や約款をどこに保管しているか
保険金は受取人が指定されていれば、相続財産とは別の手続きで比較的早く支払われます。ただし、契約の存在自体を家族が知らなければ請求のしようがありません。契約者専用のサポートダイヤルの電話番号だけでもメモを残しておくと、いざというときの手続きがスムーズになります。
デジタル遺品の生前整理|スマホ・PC・SNS・サブスクを棚卸しする
近年、生前整理の中でもっとも相談が増えているのが、スマホやパソコンの中にある「デジタル遺品」です。SNSのアカウント、ネットショッピングの利用履歴、動画配信サービスなどの月額課金(サブスクリプション)は、家族が把握しにくいうえに、放置すると料金だけが引き落とされ続けてしまいます。
まずはスマホ・PCの中身を棚卸しする
クレジットカードの明細や銀行口座の引き落とし履歴を半年ほど遡って確認すると、実際に使っているサービスが見えてきます。使っていないサブスクや会員サービスはこの機会に解約し、残すものだけをリストにまとめておきましょう。リストには、サービス名・IDやメールアドレス・おおよその月額料金・解約方法をメモしておくと、後で家族が見たときに迷いません。
スマホのロックだけは必ず解除できるようにしておく
ご本人が亡くなったあと、家族がいちばん困るのが「スマホのロックが解除できない」というケースです。パスワードやFace ID・指紋認証だけに頼っていると、中に何が入っているかを確認する手段がなくなってしまいます。信頼できる家族1人にだけロック解除の方法を伝えておく、あるいはパスワードを封筒に入れて金庫や貸金庫に保管しておくといった方法が現実的です。
なお、スマホは故人の遺品であると同時に、相続財産の一部でもあります。生前に準備がなく、家族だけでロックを解除できない場合は、専門業者に依頼する方法もあります。ただし、複数の相続人がいる場合は、後々のトラブルを避けるためにも、ロックの解除やデータの確認は相続人全員の同意を得てから行うようにしましょう。
SNS・サブスク・暗号資産|見落とされやすいデジタル資産
デジタル遺品の中でも、特に見落とされやすいのが次の3つです。順番に確認しておきましょう。
- SNSのアカウント……Facebookなど一部のサービスには、亡くなった方のアカウントを「追悼アカウント」に切り替えたり削除したりする申請窓口があります。放置すると、故人になりすました不審な投稿やアカウント乗っ取りの被害につながることもあります。
- サブスクリプション(月額課金サービス)……動画配信、音楽配信、通販の定期購入などは、解約しない限り家族に気づかれないまま料金が引き落とされ続けます。半年に一度、クレジットカードの明細を見直す習慣をつけておくと安心です。
- 暗号資産(仮想通貨)・ネット証券……取引所のIDやパスワードが分からないと、家族はその存在自体に気づけません。実店舗も通帳もないため、口座の存在だけでもメモを残しておくことが特に重要です。
パスワードの残し方|「渡す」のではなく「たどり着ける」ようにする
「パスワードを紙に書いて残すのは不安」という声もよく聞きます。実際、生きている間にすべてのパスワードを人に知られる状態にしておくのは、防犯上おすすめできません。現実的な方法として、次のような残し方があります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| エンディングノートに一覧を記入 | 市販のものや自治体配布のものを使い、自宅の分かりやすい場所に保管 |
| 金庫・貸金庫に封筒で保管 | 普段は見られず、必要なときだけ開けられる |
| パスワード管理アプリ+マスターパスワードの共有 | 個別のパスワードを覚える必要がなく、1つだけ家族に伝えればよい |
茨城県内では、取手市が高齢者向けに配布している「未来ノート」など、自治体が無料でエンディングノートを配布している地域もあります。デジタル遺品の記入欄が用意されているノートも増えていますので、まずはお住まいの市区町村の高齢福祉の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。エンディングノートそのものの書き方は、下記の記事でも詳しく解説しています。
生前整理ノート(エンディングノート)の書き方|無料で始める方法
注意点:相続放棄を考えている場合は先に確認を
もし将来的にご家族が相続放棄を検討する可能性がある場合、注意しておきたい点があります。故人の預金を引き出して使ってしまったり、解約したサブスクの未払い金を故人の口座から支払ったりすると、「相続財産に手をつけた」とみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります(法定単純承認)。これは民法で定められたルールで、知らずに支払ってしまうと、故人に借金があった場合にそれを背負うことになりかねません。相続放棄を考えている、あるいは故人の財産状況がよく分からないという場合は、何かに手をつける前に、司法書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
※相続放棄には、亡くなったことを知ってから原則3ヶ月以内という期限があります。個別の事情によって扱いが異なるため、少しでも不安がある場合は早めに専門家にご確認いただくことをおすすめします。
生前整理は「気持ちの整理」でもある
銀行口座や保険、デジタル遺品の整理は、単なる事務作業ではありません。ご自身の人生を振り返り、残された家族が困らないようにという気持ちを形にする作業でもあります。すべてを一度にやろうとせず、まずは「使っている口座」「入っている保険」「よく使うスマホのアプリ」の3つを紙に書き出すところから始めてみてください。それだけでも、いざというときのご家族の負担は大きく変わります。
生前整理全体の進め方や費用の目安は、下記の記事にまとめています。あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. スマホやパソコンの中身をすべて処分してほしい場合はどうすればいいですか?
A. データを見られたくない場合は、生前に「見ないでほしいデータ」をまとめて削除しておくか、家族に処分の希望を伝えておくことが確実です。生前整理では、こうした「デジタルの終活」もあわせてご相談いただけます。
Q. 銀行口座は何個くらいに絞ればいいですか?
A. 決まった正解はありませんが、生活費用・貯蓄用など目的別に2〜3個程度にまとめると、ご本人にとっても管理がしやすく、ご家族の相続手続きの負担も減らせます。
Q. デジタル遺品の整理は専門業者に頼めますか?
A. スマホのロック解除やデータ整理を専門に行う業者もあります。片づけDo!でも、遺品整理のご相談とあわせてデジタル機器の扱いについてご案内していますので、お気軽にお問い合わせください。
「何から手をつけたらいいか分からない」——その段階でけっこうです。銀行口座・保険・デジタル遺品の整理も含め、生前整理や実家の片付けについて、片づけDo!が無料でご相談に応じます。お電話(0120-306-122/8:00〜21:00・年中無休)または、下記のフォームからお気軽にお問い合わせください。
無料見積もり依頼フォーム
この記事に関するお見積もり・ご相談はこちらから。秘密厳守で対応いたします。